プリファブ・スプラウト Prefab Sprout Part.4)

プリファブのライブ活動に注目!Part 2.(84年、1stアルバム「Swoon」前後のライブ)

メジャーCBSとの契約

前回のPart1では83年4月のイギリス・ダーリントンでのライブを紹介しましたが、この83年から84年初頭にかけて、グループは大きな変化を迎えます。それが大手レコード会社CBSとの配給契約でした。これはあくまでグループはキッチンウェアのアーチストとしての創作活動を続け、国内のレコードの配給はCBSが担当するというもので、当時のキッチンウェアの戦略のひとつでした。

ほかにKane Gang、Hurrah!も同じようなかたちでの、大手レコード会社との配給契約に成功し、キッチンウェアはニュー・キャッスルのいち地方レーベルから、全国的な知名度を得るに至りました。イギリスの代表的音楽新聞、NME(83年8月27日号)に、これらのグループとキッチンウェア・レーベルが大きく特集されているのも、その盛り上がりを表すものだと思います。

トリオのPrefab Sprout

またグループ内部に関しては、オリジナル・メンバーのドラマー、マイケル・サーモンが83年6月に脱退しています。この8月末のNMEの記事では、ドラマーはKane Gangにパート・タイムで参加している「Daniel James」となっています。

83年6月から、84年の「When Love Breaks Down録音以後まで、プリファブのドラマーの座は固定されず、正式なメンバーは、パデイ、マーテイン、ウエンデイの3人と考えてもいいかと思います。

この3人のメンバーにドラマーのグラハム・ラント(セッション・ドラマー、Kane Gangにも参加)、プロデュースにデイブ・ブリュイス(Kane Gang)を迎えて83年8月にエジンバラのスタジオで1stアルバム「Swoon」を録音しています。

83年末のツアー

11月には今まで発売された2枚の7インチシングル「Lions in My Own Garden (Exit Someone)」、「The Devil Has All The Best Tunes」をカップリングした12インチ・シングルが発売され、国内ツアーを開始します(ドラマーはDaniel Jamesであったと思われます)。また同じ11月に前述のCBSとの配給契約が結ばれます。

この国内ツアーはエルビス・コステロ(アトラクションズをともなわないソロ・ライブ)のサポート、ロンドンICAでのDeintees、Hurrah!を含む、キッチンウェアのショーケース・ライブを含むものでした。

残念ながらこのツアーの音源は持っておらず、演奏された曲目などをご紹介することが出来ません。

ただ年が明けた84年1月14日の音楽新聞Sounds誌には、ロンドンICAでのライブ・レポートが載っています。ここではフレンズ・アゲインとの比較や、レヴュワーがバンド名に関して「尊大な」イメージを持っていることなど、つまりあまり気に入ってない様子の論調となっています。

この号の表紙はパデイとウエンデイ、ツアー中おそらくバーミンガムでのライブの翌日に行なわれたと思われるインタヴューが掲載されています。この1月に発売されるメジャー配給の1stシングル「Don't Sing」の広告も掲載され、CBSの力を背景とした、しっかりとしたプロモーションが始まっていることを感じさせられます。インタヴューしている記者は、すでに発売前の「Swoon」から、数曲を聴いていることも明かしています。

84年2月9日 London Savoyでのライブ

84年1月、シングル「Don't Sing」は発売後、チャート・インし64位まで上昇します。グループは3月に予定されているアルバム「Swoon」の発売を前に、ライブ活動を続けます。

この時期の音源が2月9日に、ロンドンのSavoyという劇場で行なわれたライブです。

以下セットリストです。

1.「Diana」 シングル「When Love Breaks Down」初回発売時のB面曲。 

2.「I Never Play Basketball Now」 1stアルバム「Swoon」収録曲

3.「Cherry Tree」 未発表曲

4.「Green Isaac」 1stアルバム「Swoon」収録曲

5.「Couldn't Bare to Be Special」 1stアルバム「Swoon」収録曲、シングルA面曲

6.「Ghost Town Blues」 1stアルバム「Swoon」収録曲

7.「Technique」 1stアルバム「Swoon」収録曲

8.「Hallelujah」 2ndアルバム「Steve McQueen」収録曲

9.「Don't Sing」 1stアルバム「Swoon」収録曲、シングルA面曲

10.「Lions in My Own Garden (Exit Someone)」 1stシングルA面曲

アンコール

11.「Couldn't Bare to Be Special」 1stアルバム「Swoon」収録曲、シングルA面曲

12.「The Devil Has All The Best Tunes」 2ndシングルA面曲

メンバーのラインアップはギター・ボーカル(ハーモニカ)にパディ、バッキング・ボーカルにウェンデイ、ベースがマーティン、ドラムになんと当時アズテック・カメラ在籍のデヴィッド・ラフィの4人編成です。キーボードのサポートはいなかったと思われます。

ドラムのデヴィッド・ラフィですが、Daniel Jamesはほかのセッション活動があったのか、それともプリファブ側の都合か、ともかくどちらものグループのフアンにとっては、嬉しいPrefab SproutとAztec Cameraの合体劇となっています。(ニール・コンティが正式ドラマーに決定するまで、ほかにもLouis Connellyという人物もグループに参加したそうです。またプリファブの複雑な曲構成からすると考えにくいことですが、リズム・マシンを使ってのライブもあったという話もあります)

話がずれましたが、このニュー・ラインアップでの演奏は、メジャー・デビューを前にしたグループの好調ぶりも手伝って、なかなかシャープなものです。「Hallelujah」、「Lions in My Own Garden (Exit Someone)」、「The Devil Has All The Best Tunes」以外は、すべて「Swoon」収録曲や関連シングルからの曲ですが、キーボードがないもののレコードでの演奏をきっちりと再現しています。

またパディの曲間のていねいなMCも印象的です。2ndアルバムの頃となると、国内のライブでのMCはかなり少なくなっているのですが、このライブでは必ず曲に入る前に一言、二言を入れています。「Cherry Tree」、「Don't Sing」、「Lions in My Own Garden (Exit Someone)」では曲をある同じ友人に捧げるといったようなことを話しています。

また「Cherry Tree」は以後セット・リストから外れ、現在までのところ正式な録音はされず、お蔵入りとなっています。

セット・リストで目につくのは「Couldn't Bare to Be Special」が2回演奏されるところです。この曲はこの時期のライブでは必ず2回演奏されていたようです。3月にアルバム発売と同時期に、シングル・カットされることになるこの曲。重要な曲というのは分かりますが、決して演奏できる曲が足りなかったわけではないと思うので、この選曲は何かの意図があったのだと想像します。初期シングルの曲調ではわかりづらかった、パディのボ−カリストしての魅力が伝わる演奏だと感じます。この曲の発表前にも関わらず、曲が終ったあとの拍手がかなり大きいのも納得です。

アンコール最後の曲「The Devil Has All The Best Tunes」をパディが絶叫して紹介したあと、せわしいくらいのアップテンポで始まるところは、このライブのハイライトかもしれません。

1stアルバム「Swoon」発売

2月末にDundee Dance Factoryでのライブで、このツアーは終了します。そしてついに3月、1stアルバム「Swoon」が発売されます。アルバムはなんとナショナル・チャートの22位まで上昇。自社のアーチストでありながら、このアルバムが出たことさえ知らなかったCBSの社長も、たいへん喜んだとのことです。

「Swoon」発売後の4月末、グループはライブ活動を再開するにあたって、ライブでのサポート・メンバーを変更します。まずドラムにのちに正式なメンバーとなるニール・コンティ、そして今までいなかったキーボーディストとして、ヴァージニア・アストレイを迎えます。

ニールはグループの音楽誌でのドラマー募集の広告を見て応募した無名のミュージシャンでした。逆にヴァージニア・アストレイはすでにソロ・アーチストとして、リリースやライブ活動を行なっていました。どのような経緯で彼女が参加することになったのかは分かりませんが、以前のドラマーのデヴィッド・ラフィといい、興味深い人選だと思います。

少し強引ですが、彼女はThe Whoのピート・タウンゼントの義姉であり、のちのピートの「Hey Manhattan!」への参加を考えると、不思議な縁だったともいえます。

84年7月5日、ロンドンでのライブ

さてこのラインアップギター・ボーカル(ハーモニカ)・パディ、バッキング・ボーカル・ウェンデイ、ベースがマーティン、ドラムにニール・コンティ、キーボードにヴァージニア・アストレイでの音源です。

1.「Diana」 シングル「When Love Breaks Down」初回発売時のB面曲。 

2.「I Never Play Basketball Now」 1stアルバム「Swoon」収録曲

3.「Green Isaac」 1stアルバム「Swoon」収録曲

4.「The Devil Has All The Best Tunes」 2ndシングルA面曲

5.「Couldn't Bare to Be Special」 1stアルバム「Swoon」収録曲、シングルA面曲

6.「Ghost Town Blues」 1stアルバム「Swoon」収録曲

7.「Technique」 1stアルバム「Swoon」収録曲

8.「Hallelujah」 2ndアルバム「Steve McQueen」収録曲

9.「Spinning Belinda」 シングル「Couldn't Bare to Be Special」B面曲

10.「Cruel」 1stアルバム「Swoon」収録曲

アンコール

11.「Don't Sing」 1stアルバム「Swoon」収録曲、シングルA面曲

12.「Lions in My Own Garden (Exit Someone)」 1stシングルA面曲

2月のライブと大きく演奏曲は変わりありませんが、「Cherry Tree」が外され「Spinning Belinda」「Cruel」が代わりに取り上げられています。また「Couldn't Bare to Be Special」の2回の演奏がなくなり1回だけとなっています。

キーボードという楽器が新たに加わったということで、全体の演奏に少し色彩感みたいなものが加わったような気はします。特に「Ghost Town Blues」、「Technique」「Hallelujah」などは、よりアルバムの演奏に近づいた感じがあります。ただ「Swoon」までの曲では、まだまだギターを使って書かれた曲ばかりということもあり、劇的に演奏全体が変化したとは言えないと思います。ヴァージニア・アストレイのプレイもリハーサル期間が短かったのか、あまり目立ちません。またニール・コンティのドラムは早々とグループになじんでいるようで、そつのないプレイとなっています。

「Spinning Belinda」はもちろん初期のバージョンではなく、シングルB面のアレンジで演奏されています。プリファブにしてはシンプルな構成が、ライブの中の良いアクセントになっていると思います。

故意なものなのか、この「Spinning Belinda」が終ったあと、パデイが「Don't Sing」と曲紹介して、かっこよくニールが16ビートのリズムを叩き出した瞬間、曲が中断。パデイはなんだかもごもごと言い訳しながら、「Cruel」へというめずらしいアクシデント(?)が聴けます。

おわりに

この翌月の8月、彼らの運命を変える(?)1曲「When Love Breaks Downの録音が行なわれます。ニール・コンティもそのまま録音に参加し、のちに正式なメンバーとなることになります。

84年下半期はグループにとって、まさに「嵐の前の静けさ」だったといえるのではないでしょうか?

(記事作成 2000年12月)

当店では「プリファブ・スプラウト」のレコード・CD・本などを集めた、特製リストをご用意しております。フアンの方はもちろん、これから聴いてみようという方への、お手軽なアイテムもご用意しております。ぜひご覧になってください。

プリファブ・スプラウト リスト

 

*この記事の作成にあたりまして、当時のグループの活動状況については、ジョン・バーチさん著「マイス・メロデイックス・メタフィジックス」の内容を、参考にさせていただきました。

*また上記のライブ音源(カセット・テープ)は海外のフアンの方との交換によって入手したものです。必ずしもたとえば、絶対にLondon Savoy でのライブであるという確証はありません。

*当店ではブートレッグ(海賊盤)は扱っておらず、また上記の音源のコピーはできませんので、その旨ご了承ください。

 

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