ネオアコのルーツ(?)、 Love の「Forever Changes」

今回の特集は、つい先頃ボーナス・トラックを追加して新装再発された、Loveの「Forever Changes」と、80年代ネオアコ・グループとの関係を探ります!

 

*月刊誌「レコード・コレクターズ 2001年7月号」(ミュージック・マガジン社 雑誌コード 19637-7)にくわしいLoveのバイオグラフィー、各アルバムのレビューが掲載されています。「タワー・レコード」など大型レコードショップなどでは、同誌のバックナンバーを置いているところもありますので、在庫があれば現在でも店頭での購入が可能だと思われます。

はじめに

「Love(ラヴ)」というグループをご存知でしょうか?主に60年代にアメリカのロス・アンジェルスで活動していたグループです。Pale Fountains(ペイル・ファウンテインズ)、Aztec Camera(アズテック・カメラ)の音楽性を語る際、ラーナー・ノーツ、雑誌記事などで触れられていることがあります。彼らにLoveの音楽が大きな影響を与えたことは、過去の彼らへのインタヴューでも公言されています。今回は今年3月のLoveの代表作「Forever Changes」CD再発を機に、このアルバムの魅力や特に80年代のネオアコ・グループへの影響について書いてみたいと思います。

マイケル・ヘッド(ex.Pale Fountains、Shack)はLove(ラヴ)マニア?

80年代ネオアコの重要グループ Pale Fountains(ペイル・ファウンテインズ)のソングライター、マイケル・ヘッドはかなりのラヴ・マニアのようです。ここに現在彼が在籍するShackの地元TV放送用に録られたという音源があります。これは彼の自宅でShackのメンバーの弟とともに、彼のお気に入りの曲を弾き語る模様を20曲以上収録したものです。同郷のBeatlesの「Across The Universe」、Bob Dylanから、彼らしいチョイスのバート・バカラック(曲はTom Jonesの歌った「What's New Pussy Cat」、そして何よりもラブの「Your Mind And We Belong Toghter」(Forever Changes再発CD収録曲、オリジナルはシングルA面として発表)、「She Comes in Colours」と2曲も演奏しています。

彼のラヴへの心酔ぶりがわかるのは、曲の構成がたいへん複雑な「Your Mind And We Belong Toghter」で、歌詞もまったく間違えずに演奏しているところです。また「She Comes in Colours」の演奏前には「とても美しい曲!」ともコメントしています。

この音源収録時には演奏されていなかったようですが、Pale Fountains時代から現在のShackにいたるまで、彼のグループのライブではラヴの「A House Is Not A Motel」(Forever Changes収録曲)がよく演奏されていました。 

ShackとArthur Leeの夢の共演!

またマイケル・ヘッドとラヴのつながりで一番印象的なものは、Shackがラヴの中心人物「Arthur Lee(アーサー・リー)」のライブのバックバンドをつとめていたことではないでしょうか?

この共演はArthur Leeが92年に行なったイギリス・ツアーの際に実現しました。アルバム「Forever Changes」収録曲を含むラヴの代表曲を、Shackが手堅くバックをつとめています。今までグループでカバーしていた「A House Is Not A Motel」ももちろん演奏しており、いちフアンとして伝説の人物でもある、Arthur Leeのバックバンドを経験できたことは嬉しかったのではないでしょうか?Arthur LeeもShackの演奏をほめていたとのことです。

しかしマイケル・ヘッドをはじめとして、80年代のネオアコ・グループへ影響を誇ったラヴの魅力とはいったいどういうものなのでしょうか?

Loveの歴史

ここでラヴというグループの簡単な歴史を。彼らは1965年にロス・アンジェルスで結成、中心人物のArthur Lee(Vo.G)、Bryan Maclean(G.Vo)、Ken Forssi(B)での編成の3rdアルバム「Forever Changes」録音までが、グループとして機能していた時期だと思われます。のちのラヴはそれまで以上に、Arthur Leeのワンマン・バンドとしての性格が強まっていきます。なお2ndアルバム「Da Capo」まで、ドラムをAlban Pfistererが担当しています。

西海岸の(当時の)新興レーベルElectraから、シングル「My Little Red Book」、1stアルバム「Love」でデビューした彼らの音楽性は、まだ荒削りでのちのガレージ・コンピ「ナゲッツ」に収録されるのも納得のサウンドでした。「My Little Red Book」の作者バート・バカラックは、このラヴによるカバー・バージョンをまったく気に入らなかったとのことです。

しかし2ndアルバム「Da Capo」で変化が表れはじめます。シングル「7 And 7 is」ではまだ初期のスピード・ナンバーを継承したサウンドでしたが、アルバムでは、メンバーにサックスとフルートのTjay Cantrelliを迎え、のちの3rdアルバム「Forever Changes」へつながる、スローで叙情的な曲が作られています。皮肉にも毛嫌いされたバート・バカラックのような、複雑なコード進行と曲の展開、間奏はアコーステイック・ギターやフルートでのソロ・メロデイと彼らしか作れない「ラヴ・サウンド」が徐々にかたち作られていきます。このアルバムの「She Comes in Colours」や「The Castle」、Bryan Maclean作曲の「Orange Skies」は「Forever Changes」に収録されていても違和感のないものになっています。

「Forever Changes」についてのエピソード

そしてついに 3rdアルバム「Forever Changes」へとなるわけですが、まず内容の紹介の前に、このアルバムに関する情報を書き出してみたいと思います。

・1967年の発売当時のアメリカでのチャート順位は 154位。1st(57位)、2nd(80位)と比べてもヒットとはいえない成績におわる。

・しかし当時からイギリス、ヨーロッパでの評価は高く、イギリスでのチャート順位はなんと24位!のちの「ロック名盤Best100」のような音楽雑誌の企画などでは上位の常連作品へ。

・このような評価を物語るように現在まで廃盤になったことがない稀有なアルバム。アナログの存在が危うくなった90年代はじめでも、ジャケとジャケ裏のデザインが若干違うものの、ドイツ・プレスのアナログがカタログに残っており気軽に入手できた。

・サウンド面では録音当初は、Arthur Lee以外のメンバーの演奏技術に不安があり、セッション・ミュージシャンが起用される。ドラムのハル・ブレインをはじめ、A&Mなどソフト・ロックを含め、当時の西海岸で制作された多くの作品に参加したメンバーたち、つまり「ロジャー・ニコルス・アンド・スモール・サークル・オブ・フレンズ」とほぼ同じメンバーが演奏していることになる(アルバム全編にわたるストリングスとアコーステイック・ギターによるサウンド面だけに注目すれば、ソフト・ロックぽいとの形容も可能?ただラヴの曲の緊張感は独特ですが)。録音中にメンバーの改心もあり、セッション・ミュージシャンの起用は録音初期にとどまった。

・当初プロデューサーに予定されていたのは、なんとあのNeil Young。結局この話は流れたものの収録曲「Daily Planet」にギターで参加しているという話もあり。

「Forever Changes」の独自性

とさすが名盤と言われるアルバムだけあって、たくさんのエピソードが残されています。しかしやはりこのアルバムを名盤たらしめているのは、シンプルな理由=数々のいい曲が収められているからだと思います。

スパニッシュ・ギターぽい旋律のイントロからはじまるBryan Maclean作曲の「Alone Again or」から、ラストの「You Set The Scene」までの11曲、それぞれが魅力ある曲ばかりです。

それまでのアメリカ、またイギリスのロックでは見られなかった、メジャー・セブンスを多用した曲作り、クラシック好きでもあったArthur Leeがついに具現化できた、ストリングス・セクション導入、厭世観さえ感じられる内省的な歌詞、当時としては先を行き過ぎていた作品だったのかもしれません。Arthur Leeよりも、センチメンタルな曲を書くBryan Macleanの2曲も効いています。

ラヴとArthur Leeの作品(特に2nd以降)は、一聴して「○○っぽい」と他のバンドの名前を挙げたり、アメリカのバンドの音でも、イギリスのバンドの音にも聞こえないという独自性があると思います。

Arthur LeeとベーシストのKen Forssiは黒人ですが、特にArthur Leeは子供の頃からビートルズはもちろんゾンビーズ、マンフレッド・マンなど、白人のブリテイッシュ・ビート・グループのフアンでした。服装も当時の写真を見てみると、イギリスやヨーロッパっぽい雰囲気が感じられます。ギブソンのダブルネックのギターを抱える彼は最高にかっこいいと共に、自由な気風の街に住んでいたとはいえ、彼の存在はある意味浮いていたかもしれません。しかしその独特の個性こそが、現在でも通用するラヴの独自性を引出していたことは間違いないと思います。

「Forever Changes」の曲作り、サウンドの影響

またマイケル・ヘッドに話が戻りますが、Pale Fountainsの初期音源には「Forever Changes」収録曲の「The Good Humor Man He Sees Everything Like This」とほとんど同じコード進行の曲があります。これがデビュー・シングル収録の「Just A Girl」に発展したのではと思うのですが。。。同様にマイケル・ヘッドはレコードの針が飛んだ音を挿入した録音トリックを使っていましたが、これもこの曲のラストの部分からヒントを得たのではないのかと想像します。Pale Fountains初期に顕著な、フルートの使用も、ラヴの影響が大きいのではと思います。

(Pale Fountainsのデビュー・アルバム「Pacific Street」84年発売当初の日本盤ライナー(北中正和さん執筆)にて、バンド名の「Pale Fountains」もラヴの「Feel Daddy. Feel Good」の歌詞の一節から取られたのでは?という指摘がありました)

また導入部だけではありますが、Aztec Cameraのデビュー曲「Just Like Gold」のコード進行も、「The Good Humor Man He Sees Everything Like This」との類似点を感じます。


不遇のグループ?Love

さて今回の特集記事の資料といたしまして、「Forever Changes」再発CDの訳出されたライナーノーツと、2枚組編集CD「Love Story」、アメリカ盤アナログ「Best of Love」、イギリス盤アナログ「Electra Masters〜Love」のライナー・ノーツを参考にさせていただきました。

私の知る限りではありますが、これまでラヴについて音楽雑誌の特集記事などで扱われたことは少なかったと思います。あくまで断片的な情報でしか、彼らの存在を意識することしか出来ませんでした。たとえばメンバーのBryan Macleanの妹が「Lone Justice」というグループの「マリア・マッキー」で、彼女の作品紹介の中でラヴについて触れられることがありました。またドアーズも同じレーベルの所属で、彼らを熱心にレーベルに推薦したのがArthur Leeだったというエピソードも目にしました。

あくまでもロス・アンジェルスの街の中での演奏にこだわり、グループとしての活動中はツアーをほとんど行なわなかったというのも、彼らがマスコミに大きく取り上げられなかった理由かもしれません。そのためリアル・タイムで日本へ紹介されることが少なかったのではないでしょうか?

最初に述べたネオアコ・アーチストのライナーや、ガイド本の記述でかえって、ネオアコ・ギターポップフアンの認知度の方が大きいのかもしれません。ただ私も参考にさせていただいたライナーノーツ以外の情報をぜひ知りたいと思っています。今回の「Forever Changes」の再発で、Beach Boysまでとはいいませんが、今まで以上の再評価がされ雑誌などで特集されることを願っています。

Loveに関するあれこれ

1.
今回の再発CDのブックレットでの彼らのカラー写真はたいへん美しいものが使われています。おそらくデスクトップ上で、写真(ネガ?)の褪色を元に戻す技術が進歩しているためだと思います。このおかげでラヴのメンバーの特異なファッション・センスも確認できます。同時期のジェファーソン・エアプレインなどのグループとは違う、イギリスっぽい雰囲気の服で古くさくみえないところは驚きです。

2.
グループ活動中とは違い、ここ10年ほどはツアーに出ていたArthur Leeですが少なくとも、アメリカ以外の国では、バックバンドは「現地調達方式」のようです。チャック・ベリーなどロックンロール時代の伝統といえばそれまでですが、そのおかげで興味深い共演が多くなっています。前述の92年のShack、94年には、ショーン・オヘイガンの「ハイ・ラマズ」がバックをつとめたという話もあります(未確認)。またこれは70年代のラヴの再結成という名目でのグループですが、ドラムはのちに「マイ・シャローナ」のヒットを飛ばす「Knack」のメンバー「Bruce Gary」。彼はラヴの大フアンで、すでにライブで演奏する曲は以前から覚えていたので、練習する必要がなかったとのことです。

3.
オリジナルの「Forever Changes」が発売されたのは1967年11月。そろそろアメリカではレコードの「モノラル」バージョンが発売されなくなる頃だったのではと思います(ビートルズを例にとれば、1967年6月の「Sgt Pepper's」まではアメリカでのモノラル盤が発売されていました)。このアルバムのアメリカ盤のモノラル盤(モノラル・ミックス)ははたして存在したのでしょうか?右の写真はイギリスで発売された「Forever Changes」のオリジナル・モノラル盤(品番EKL 4013、ステレオ盤の品番は EKS 74013)です。あくまで想像ですが、アメリカ盤のモノラル盤が存在していなければ、ステレオ・ミックスからモノラル化されたものの可能性もあります。ちなみに私の持っているこの盤は状態が悪く、くわしく聞き比べることはできませんでした。

(記事作成 2001年5月)

 

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