イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speak

今回はオーストラリア出身であのサラ・レーベルからのリリースもあったイーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakを取り上げてみたいと思います。

彼らのイギリスでのライブの模様の画像、おまけとして同時期のトラッシュ・キャン・シナトラズTrash Can Sinatrasのライブの画像もありますのでご覧下さい。

簡単なプロフィール

まず彼らイーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakの簡単な紹介です。彼らはグループのオリジネイターであり、ほとんどの作曲を手がけるMatt Loveを中心としたグループです。何より女性ボーカルMary Wyerのすばらしい歌声がサウンドの大きな個性となっています。オーストラリア、シドニー出身のグループで活動は、86年から現在までも続いています(メンバー構成は各時期で変化、また活動のごく初期にMary Wyerが参加していたかどうかは不明です)。初期は地元のインディー・レーベルからのリリースでしたが、イギリスのサラ・レーベルからのリリースにより、本国以外の国でも知られることとなりました。1枚だけとはいえサラからオリジナルのアルバムをリリースしており、日本盤CDも発売されていました。

イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speak魅力とは?

私がこのグループに出会ったのは、コンピレーションCD「Fountain Island」に収録されていた「One Step Forward」がきっかけでした。このコンピは以前からサラ・レーベルに所属していたグループの楽曲も、少しずつ多様性が出て来ているものが多く、サラのコンピの中でも特に魅力のあるものだと思います。その中でも彼らの「One Step Forward」のキャッチーさを一番気に入りました。そのあとサラからのシングル群、のちに発売されることになる、クアトロ・レーベルから発売されていた日本盤CDでさらに彼らのフアンになりました。

イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakはほかのサラのグループとちょっと違う印象がありました。ギターポップ的な楽曲・アレンジは同じでありながら、なぜか「残る」曲だなと思いましたし、今聴いても飽きずに聴くことが出来るのです。

From Down Under (Part.2)

ほかのサラ・レーベルのグループと違う(浮いている?)というのは実は当然で、彼らはイギリス出身のグループではなく、オーストラリア出身で、サラからリリースされた最初のシングルは、地元でリリースされたシングル二枚をカップリングしたものでした。

以前この特集ページで取り上げたThe Killjoysの項でも書かせていただきましたが、オーストラリア・ニュージーランドのグループの特性を、このイーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakにも感じます。イギリスのシーンに影響を受けながら、出てくる音はそれらとは微妙に違う空気を感じることが出来ます。

また女性ボーカルMary Wyerの歌声はなぜか心に残ります。どちらかというとかわいい声なのですが、かといってそれを強調している訳ではなく、逆にうまく聴かせようとする訳でもなく、ちょうどいい匙加減だと思います。彼らのシングル「Beautiful Day」のB面曲(日本盤CDのボーナス・トラックとしても収録)に「Nothing Much at All」という曲があるのですが、けっして派手な曲ではないにもかかわらず、ここでの彼女の歌(メロディー)がこの曲の魅力のすべてでは?と思ってしまうくらいです。

またサラでのラスト・シングル「(All You Find is )Air」でのボーカルもすばらしいの一言につきます。この曲はちょっと垢抜けないセイント・エテインヌといったアレンジなのですが(曲自体はかなりいいです!)、ミデイアム・テンポでの彼女のボーカルもなかなか聴かせてくれます。

ところで彼らの曲には男性ボーカルの曲もあり、これもなかなかいい味を感じます。ただこのボーカルを取っているのが、主な作曲者のMattかギターのPaul Clarkeなのかが、はっきりしません。

後述しますが私は彼らのライブを92年にロンドンで見たのですが、Mary以外に二人のギタリスト、それぞれがボーカルを取っていたような記憶があるのです。あくまで記憶なのですが、いかにもイギリスのインディーを聴いてるぞといったルックス&ボーカルの方がMattで、ルックスも声もThe Go-Betweensのグラント・マクナレンをほうふつとさせる方がPaulだったと思うのですが...(逆の可能性もあります)。とにかくそういった意味でも、あまり女性ボーカル・グループが好みでない方にも、おすすめできるグループだと言いたいのです。

次に彼らの良くも悪くもちょっと変わったセンスについて書きたいと思います。

無意識な「外し」の感覚?

これは主にサウンド面での話になるのですが、彼らの楽曲のアレンジは少々変わっています。日本編集のサラ・レーベル・コンピにも収録されていたシングル曲「Beautiful Day」では、彼らの曲の中でも特に美しいメロディ・ラインを持つキャッチーな曲だと思うのですが、曲の途中でまったく別の展開が用意されています。ワルツのリズムに、回転数を変えた男声でおとぎ話を語るような(?)構成があり、また元のヴァースに戻っていくというものです。前述した「One Step Forward」でも、最後はブレイクしてサンプルを使ったダンス的な部分に変化して終っています。

彼らには失礼ですが、これらのアレンジでの試みがどこか垢抜けないといいますか、最初聴いたときは「この部分が無い方がいいのに」とさえ思ったほどでした。

しかしだんだんそういった部分も彼らの魅力の一部だと思えるようになってきました。これも前述した、サラでのラスト・シングル「(All You Find is )Air」でも、彼ら流のおしゃれ打ち込みサウンドも、すごくいい曲なのに最初はサウンドがちょっと野暮ったいなと感じていたのですが、逆に彼らよりおそらくこういった音作りのうまいであろうグループの曲よりも、現在でも飽きずに聴けるように感じています。

野暮ったいといえば、彼らのジャケット・センスもけっしていかしてるとはいえないものだと思います。特に唯一のアルバム「Feral Pop Frensy」のジャケットは当時、ニルヴァーナの成功により続々とリリースされていた「グランジ」風のアートワーク、またはMy Bloody Valentineの「Loveless」のジャケットのちょっとダサイ版?ともとれるようなもので、かなり?マークです。当時の日本の音楽誌のレビューでも、まずこのジャケットについて触れられていたような記憶があります。

Bizarre Love Triangle

なんだか彼らのセンスをけなしているようですが、ここでは彼らの先見の明では?と思わせるエピソードをひとつ。

彼らは現在でも以前からの英国ロック・フアンはもとより、若いテクノ・フアンにまで評価されている、ニュー・オーダー New Orderの曲をカバーしています。ニュー・オーダーが名実ともに現役だった86年発表「Brotherhood」に収録されている「Bizarre Love Triangle」がその曲です。

元曲はまさにニュー・オーダー節ともいえる、キーボードがピコポコいっているアップテンポな曲で、彼らのカバー・ヴァージョンを聴くまで、そのヴォーカル・メロディの良さに気付くことが出来ませんでした(少なくとも自分は)。しかし彼らのカバー・バージョンはもちろん生演奏で引き語り調ともいえる歌重視のアレンジで、これを最初聴いたときには感動してしまいました。

この録音はもともと地元オーストラリアのBig Homeレコードからリリースされ、のちにサラ・レーベルからの「Nothing Ever Happens」EPにも収められることになったものです。

クレジットを見ると録音は87年11月とあり、ニュー・オーダーの「Brotherhood」発表後、比較的早い時期にこの曲を気に入りカバーしたものだと思われます。

実はこのニュー・オーダーの「Bizarre Love Triangle」は、彼らイーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakだけではなくほかの女性ボーカル・グループにもカバーされています。

ひとつはこのページをご覧いただいている方でご存知の方も多いと思われる「Devine&Statton」(元Weekendのアリソン・スタットンが在籍)、もうひとつはなんとこのカバー曲がアメリカでかなりのヒットになった、オーストラリアのグループ「Frente!」です。

この記事を作成するまで特に意識したことはなかったのですが、いったいこの三つのどのグループが最初にこの曲をカバーしたのでしょうか?「Devine&Statton」の録音も比較的早い時期かもしれません。メンバーの「Ian Devine」はマンチェスターのバンドの中でも古参の「Ludus」にいた人で、同郷という意識でカバーしたのかもしれません。余談になりますが、このカバーがきっかけになったのか、「Devine&Statton」の2ndアルバムでは、ニュー・オーダーの「ピーター・フック」が参加した曲があります。

どうでもいいことではありますが、判官びいき的にもイーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakの目のつけどころは早かったとしておきたい気持ちです。

イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speak 93年3月、ロンドンでのライブ

アルバム「Feral Pop Frensy」が発売された直後の1993年3月、おそらくこのアルバム・リリースにともなうイギリスでのライブが行なわれています。そのロンドン、カムデンのクラブ「ファルコン」でのライブを当時見ることが出来ました。

彼らの登場までに前座のバンドがたしか二つあって、アルバム収録曲中心の演奏でした。今となってはくわしくどの曲をやったかまでは思い出せませんが、レコードにあるSEなども再現していたと思います。楽曲の性質もあるかと思いますが、カチッとした演奏ではなく、また逆にギターがジャンジャンなってるといったものでもなく、やはりボーカルのMary Wyerの歌声が印象に残りました。

下に自分がそのときに撮影した写真を見れるページへのリンクをはっております。おまけとして同時期のトラッシュ・キャン・シナトラズTrash Can Sinatrasのライブの画像もありますのでご覧下さい。こちらはロンドン都心部のクラブ「ボーダー・ライン」でのライブです。

イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speak 画像

おわりに

イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speakについて、グループのパーソナルやデイスコグラフィー的な記述に関してはきちんと触れられないままでしたが、彼らの情報のひとつとして軽く読んでいただけたとしたら幸いです。またそれぞれの曲に関する感想などは、あくまでも個人的主観にもとづくものです。「野暮ったい」などと表現した部分もありましたが、けっしてネガテイブな意味ではありませんので、その点付け加えさせていただきます。

(記事作成 2001年3月)

当店では「イーヴン・アズ・ウイ・スピーク Even As We Speak」のリリースを少量ではありますが、販売しております。簡単なコメントも付してありますので、ご覧になってください。

リストNO.2(イニシャルEからJ)

 

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