EBTG Part.2 エヴリシング・バット・ザ・ガールと ポール・ウェラー の共演ライブ

今回のPick upは、Everything But The Girl(以下EBTG)と、あのポール・ウェラーが共演したライブについての特集です。

83年1月 ロンドン ICAでのライブ

前回のEBTGの記事ではくわしく触れられなかった、ポール・ウェラーがゲスト参加した、83年1月のロンドンICAでのライブの曲目です。「ICA Rock Week」という企画ライブの一貫で、ピ−ト・ワイリー率いる「Wah !」のオープニング・アクトとしての演奏でした。

1.On My Mind (「Night And Day」のB面曲、マリン・ガールズのシングル・タイトル曲)

2.Nevertheless (スタンダード曲のカバー、ニルソンのカバーがヒント?)

3.Waiting Like Mad (ベン・ワットのソロ・アルバム「North Marine Drive」収録曲)

4.English Rose (ジャムのカバー、EBTGでのリリースあり)

5.Night And Day (コール・ポーターのカバー、EBTGのデビュー曲)

6.Fever (ペギー・リーのカバー、ポール・ウェラーはジャム時代のカバーあり)

7.Girl from Ipenema (A.C.ジョビンのカバー)

*アンコール(詳細不明)

8.Fever (?)

前回紹介した初期のライブと曲目の変化はありますが、やはりカバー曲中心のセットです。演奏はベン・ワットのギター1本によるもので、4曲目の「English Rose」からポール・ウェラーが参加しています。

ポール・ウェラー登場

トレーシーが「English Rose」をフェイヴァリット・ソングと紹介し、ベンがイントロを弾き始めた数秒後、客席から歓声が上がります。観客は事前に出演を知らされていなかったらしく、トップ・グループであるジャム解散直後のポール・ウェラーの登場は、驚きを持って迎えられたのではないかと思います。ボーカルは取っていませんが、曲の途中から彼もギターを弾き始めます。

この「English Rose」はジャムの「All Mod Cons」で発表された楽曲で、それまでのジャムの作品には見られなかった、アコーステイック・ギター一本の伴奏によるバラード曲です。ブレイクの部分は少しボサノバっぽさを感じさせる、当時のジャムの楽曲の中では異色の曲だったのではと思います。美しいメロディはシングル・カットされていたらヒットしたのでは?と思わせますが、この時期のジャムのシングル、たとえば「Down in The Tube Station〜」などと比べると、あまりにもタイプが違う曲だと感じます。

NME カセット・コンピ「Packet Packet」

この曲を82年にカバーしたのがEBTGです。彼らはチェリーレッドからのデビュー直後、音楽誌「NME」から出ていたカセット・コンピへの参加を依頼されます。

このカセットは通販のみのシリーズものでリリースされていて、これに収録のために録音された新曲やライブなども含まれています。またそれ以後そのアーチストのリリースとしては未発表に終ったものも多く、興味深い音源が収録されていることで知られています。

それぞれがポール・ウェラーのフアンであったおそらく彼ら自身の選曲で、コンピへの参加が決定されます。この時点ではまだHullに住んでいた彼らは、近隣の町のスタジオでたった1時間で録音を終了します。ほかにブルーベルズ、初期のアニマル・ナイト・ライフなども収録されている、シリーズの6作目「Packet Packet」というカセットにて無事リリースされることになります。

このカバーは90年代までこのカセットのみでしか聴けないものでしたが、チェリーレッドのコンピCDについに収録されることになり、さらにジャムのカバー集・コンピにも収録され、現在はそこで聴くことができます。

3人目のEBTG 

ウェラーはつづくコール・ポータ−のカバー「Night And Day」でもギターを弾いています。ベン・ワット同様、完全なジャズのコードをプレイしています。判別しにくいのですが、オクターブ奏法も取り混ぜながらのソロもウェラーが担当していると思われます。

そして続く「Fever」ではギターはベン・ワットに任せ、ウェラーもボーカルをとっています。曲のヴァース部分の1番はトレーシー、次をウェラー、そして最後はベン・ワットを担当と、分け合って歌っています。EBTGが他のアーチストへのボーカル参加をすることはデビューから現在まで、めずらしいことではありませんが、EBTGがボーカルでゲストを迎え入れるのはなかったことではないかと思います。ここでは3人編成のEBTGが実現しています。

スタカン以上?ジャムの後期シングル群

さて「Fever」はポール・ウェラーがジャム後期にカバーしている曲です。カバーといっても曲全体をというわけではなく、シングル「The Bitterest Pill」のB面曲「Pity Poor Alfie」の曲中に、その一節をはさんでいるという構成です。サックスやピアノなどのジャジーなアレンジが効いていて、そこでの彼のボーカルもかっこいい仕上がりとなっています。

話はずれますが、「Absolute Beginners」(81年発表)以降のジャムのシングル、特にB面曲は、ある意味のちのスタイル・カウンシル以上に、ソウルやジャズ、あるいはそういったエッセンスを取り入れたネオアコ・グループのサウンドに通じるものを感じます。

この時期のプロデュースは、のちにスタカンを手がけることになるピーター・ウイルソンとで、おそらく彼のインプットも大きかったと思われるアレンジなど、サウンドの共通点が見られます。

ただあくまで私見ではありますが、スタカンの1stまではグループのコンセプトを重視するため("どんなサウンドにも挑戦する" 発言etc.)、曲のスタイルによる当たりはずれがあったのではないかと思います。

ジャム後期ではそこまでこだわらないかたちで、それまでの曲の良さはそのままに、新しいサウンドに挑戦しているように思います。

ジャズ・バラッドの「Shopping」、スタカンの2nd「Our Favorite Shop」収録でも合いそうな「Great Depression」、これはチャイ・ライツのカバーですが「Stoned Out of Mind」などはB面であることがもったいないような楽曲だと思います。

(逆に「Precious」(「Town Called Malice」と両A面扱い)は、彼が当時好きだったPig bug 経由のジェイムス・ブラウン風のファンク・ギター・カッテイングの曲で、メロディーよりスタイル重視のものだと感じます。彼はのちのスタカン時代、同じモチーフを使って「Money Go Round」として、再びシングルにしていす。発表する作品が常にチャート・インするPOPグループのシングルとしては冒険だと感じるのですが、彼はこのタイプの曲に余程思い入れが深かったのでしょうか?)

不思議なことに同じ制作陣で同じ時期に録音されているにもかかわらず、なぜかアルバムの「Gift」収録曲にはそれまでのジャムとしての個性の方を強く感じてしまいます。

ウェラーは「Gift」の制作には、ものすごく神経を使ったと語っていましたが(そして、出来は思ったようにはいかなかったとも告白しています)、この時期のシングルB面はリラックスして作業にあたった結果が吉と出たのでしょうか?

たった20分間の共演

EBTGのライブに話を戻します。ライブ本編ラストの曲はウェラーによって曲紹介される、ボサノバの定番、「Girl from Ipenema」です。ここではウェラーは全編にわたって主旋律のボーカルをとっていて、トレーシーがハーモニーをつけています。

ここでいったんライブは終了。このあとアンコールとしてもう一度「Fever」を演奏したと、ベン・ワットはコメントしていますが、それを入れても共演の時間はかなり短いものでした。

この時期実際にライブで彼らが共演したのはこの公演のみだったようです。音楽業界でのキャリアでいえば、ポール・ウェラーがかなりの先輩になるわけですが、EBTGはこのあとスタイル・カウンシルの録音に参加したり、アルバム「Eden」ではもしかしたらウェラーが先にやりたかった(?)アルバム全体でのニュー・ジャズ・サウンドを実現させています。

このライブから10年以上経った今では、どちらもある意味大御所的なアーチスト。時代を感じさせるとともに、当時こういった共演が行なわれたことへの驚きも感じるのでした。

(記事作成 2002年7月)

当店では以下のEverything But The Girlのリリースを販売しております。簡単なコメントも付してありますので、ご覧になってください。

リストNO.1(イニシャルAからJ)

 

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