ラヴ with アーサー・リー ツアー・リポート & トラッシュ・キャン・シナトラズの故郷探訪

今回のPick upは「Love ラヴ」の中心人物アーサー・リーの最新ツアーのレポートと、トラッシュ・キャン・シナトラズの故郷、スコットランドはキルマーノックの写真を紹介します。

*ラヴに関しましては以前も当ホーム・ページで "ネオアコのルーツ(?)、 Love の「Forever Changes」" として取り上げています。前回の記事は こちら!

*また月刊誌「レコード・コレクターズ 2001年7月号」(ミュージック・マガジン社 雑誌コード 19637-7)にくわしいLoveのバイオグラフィー、各アルバムのレビューが掲載されています。「タワー・レコード」など大型レコードショップなどでは、同誌のバックナンバーを置いているところもありますので、在庫があれば現在でも店頭での購入が可能だと思われます。

*現時点でのトラッシュ・キャン・シナトラズの最新ライブのレポートは こちら!

 

1. ラヴ with アーサー・リー ツアー・リポート



静かなラヴ再評価ブーム

発表後30年以上を経た今でも、3rdアルバム「Forever Changes」の支持や評価は衰えることを知らないラヴ。アメリカ西海岸出身のグループで、特に活動中は本国よりイギリスでの人気が高かったといわれています。それもあってかその後、ペイル・ファウンテンズ、アズテック・カメラなど、いわゆるイギリスのネオアコ・グループもラヴの作品に影響を受けたと広言しています。

一般のリスナーへも2枚組ボックス・セットがリリースされた95年頃から、「Forever Changes」を中心とした再評価が広がり、特に昨年から今年にかけては3rdアルバム「Forever Changes」とそれ以前の2枚のアルバムが新装再発され、オリジナル・メンバー参加の初期3作が手軽に聴けるようになりました。

また90年代は旧作の再発だけではなく、アーサー・リー with ラヴとしての新作の発表、またオリジナルのラヴ時代には考えられなかったヨーロッパへのツアーなど活動は続けられていました。前述の元ペイル・ファウンテンズのShackがバックをつとめたツアーもありました。

しかしこの再評価の盛り上がりの中、グループの中心人物アーサー・リーは不遇な時期を過ごしていたようです。

アーサー・リーの服役と元メンバーの相次ぐ死

96年、彼は拳銃と大量の弾薬の所持、また発砲事件を起こしたとして12年の懲役を言い渡されます。しかし実際に発砲したのは彼ではなく友人で、拳銃(とその弾薬)は彼の以前のガール・フレンドが残していったもの。もちろんこの言い分はアーサー・リー側から出ているものではありますが、すくなくとも発砲については友人本人が自分の所業だったと証言しているらしく、12年の懲役というのは過度に重い判決に思えます。しかし彼がこれ以前にもドラッグがらみの告発を受けていたこともあったのか、当時次のツアーに向けての準備をすすめていたにもかかわらず、服役することとなります。

不運はそれだけにとどまりませんでした。服役中の98年に「Forever Changes」の頃のラヴのベーシスト、ケン・フォーシーが死亡。また翌年オリジナル・メンバーでギタリスト、もう一人のソング・ライターでもあったブライアン・マクリーンも亡くなります。

ボックス・セットのリリース以後、今まで以上にラヴの再評価が進んでいたと思います。しかし他のグループのように再結成ツアーや回想録の出版などその波を後押しする作業以前に、本人達はまさに人生の危機を迎えていたというのは皮肉としか言い様がありません。

しかし昨年末、アーサー・リーは判決より短い約6年の刑期を終えて、ついに自由の身となりました。彼は早速、逮捕以前のツアーでも一緒に演奏していた「Baby Lemonade」とともにツアーの準備を始めます。

ヨーロッパツアーの開始

春にこのヨーロッパツアーの告知が始まります。ライブ活動のブランクを気にしてか、アーサー・リーはチケットの売れ行きを心配していたとのことでしたが、ふたを開けてみれば各地でSold Outの公演が続出。ツアー直前には久方振りとなるインタビューも音楽誌「MOJO」に掲載され、ふたたび「ラヴ」への注目度が高まっている中でのツアーとなりました。

ヨーロッパツアーは、地元のLAでのウオームアップ的な公演のあと、北欧、オランダ、スペインを廻り、イギリスに到達という約一ヶ月のスケジュール。イギリス国内の公演も、日が近づく頃にはほとんどの都市で売り切れとなっていました。

Live in UK

この時期のヨーロッパでは開演時刻の20:00でもまだ夕方の日差しです。開演前からかなりの人が集まっており意外に女性も多いなか、当時から「ラヴ」を聴いていたのではと思わせる年齢層の人達も見かけます。

出演予定時間をかなりすぎて、まずバックバンドの「Baby Lemonade」の面々が登場します。

彼らはMike Randall、Rusty Squeezboxを中心としたアメリカ西海岸のグループで、シンコー・ミュージックから最近発売された「Power Pop」ガイド本にも作品が紹介されています(ネオアコ本にも関連グループの「Neighbours」が掲載されています)。Mike Randallは昨年再発された「Forever Changes」再発盤にもクレジットされており、現在アーサー・リーの右腕のような存在なのかもしれません。

そしてついにアーサー・リーの登場!夏なのに厚いフェイク・ファーを着て帽子にサングラスという、90年代以降の写真でおなじみのスタイルです。

ジェイムス・ブラウンのようにベーシストにコートを脱がせ、ライブはスタート。バート・バカラック作でのシングル・ヒット「My Little Red Book」がオープニングです。彼自身はギターを持たず、タンバリンやマラカスを振りながら「Orange Skies」、「Hey Joe」「She Comes in Colours」、「Your Mind We Belong Toghther」などを演奏していきます。

正直ライブが始まる前は新しいマテリアルは少ないでしょうし、もっと低調なパフォーマンスも予想していました。しかしアーサー・リーのボーカルは力強く衰えを感じさせません。今年57歳だそうですがひいきめを抜きにしても、まだまだ現役のパワーとカリスマを感じさせてくれます。それも無理をして力がみなぎらせているという感じよりも、感情をこめてていねいに歌っているという印象です。特に「Signed DC」のような、ブルース色のある曲でのボーカルにすごく感情が入っているのが伝わってきて印象的でした。

「Baby Lemonade」による演奏もしっかりしたものでした。「She Comes in Colours」や「Your Mind〜」などの、レコードではフルートが使われているような曲も、フレーズをギターで代用し雰囲気を再現しています。間奏や後奏が長い曲は短くカットされているケースがありましたが、普通のバンド編成では再現しづらい部分も多いからだと思われます。

「Forever Changes」の再現

そしてアーサー・リーが白のストラトキャスターをかかえ、あの「Alone Again or」のイントロを弾き始めると会場は異様な盛り上がりにつつまれます(演奏前にはこの曲の作者、ブライアン・マクリーンへのコメントがありました)。以降次々と「Forever Changes」収録曲が演奏され、このツアーではじめてライブで披露されるという「Live And Let Live」、「Bummer in The Summer」も演奏されました。「Andmoreagain」ではいっしょにメロディーを口ずさむ人も多くみられ、やはりこのアルバム収録曲の人気の高さを感じました。

ライブ全体の感想ですが、ストリングスが大幅に導入されていた「Forever Changes」収録曲では、さすがに4人編成バンドでのサウンドの再現は難しいようでした。逆にアップテンポの部分ではたてノリの演奏で盛り上がるところもあり、これはこれで客層の若さを考えれば納得できるような気がします。

実はNME誌の記事などで、ヨーロッパ・ツアーではストリングスやホーンも導入すると伝えられていました。しかし少なくとも自分の見た公演ではバンドのみの演奏でした。

ちょうど同じ時期に、春に来日も果たしたビーチ・ボーイズのブライアン・ウイルソンもツアーをまわっていました。ステージに10人以上もバッキング・メンバーがいて、アルバム「ペット・サウンズ」を再現していましたが、こういった編成での「ラヴ」のライブも見てみたいと思わせます。あるいはストリングスをバックとして「Forever Changes」収録曲の演奏も見てみたいと思います。

余談となりますが、今回このブライアン・ウイルソンとアーサー・リーのツアーが並行していたために、街によって2つの公演が連日で行なわれるところもありました。60年代後半にはブライアンはツアー不参加、ラヴは西海岸以外のツアー自体をおこなっていなかったのですから、当時彼らを聴いていたイギリスのフアンにはうれしい出来事だったのではと思います。

これからのアーサー・リーの活動

すでにヨーロッパ・ツアーを終了した彼らですが、現在のところは次のツアーの日程などは発表されていないようです。このメンバーでの新作の録音の話もあるらしく、これからの活動にも注目したいところです。


追記:イギリスの音楽雑誌「MOJO」が、単行本で発刊している「MOJO HERO」シリーズ。その第4巻がアーサー・リーとラヴのバイオグラフィーです。彼のインタビューはもちろん「Forever Changes」制作関係者、またShackとのツアーにも触れられ、Shackのジョン・ヘッドの発言も紹介されています。ハード・カバーは7.500部限定とのことですが、まだ洋書通販サイトで購入可能だと思います。またソフト・カバー版ももうすぐ発売になるとのことです。現在入手出来るもののなかで、イギリスのフアンジン「The Castle」以外の唯一のラヴの出版物ではと思われます。この記事を作成するにあたって参考にさせていただきました。

2. トラッシュ・キャン・シナトラズの故郷探訪

トラッシュ・キャン・シナトラズの故郷、スコットランドはキルマーノックに行ってきました。

彼らの3rdアルバム「Happy Pocket」の裏ジャケットにはキルマーノックを中心とした地図が載せられていて、彼らのホーム・タウンであることがうかがえます。今までの彼らの作品が録音されているスタジオ、シャビーロードもこの街にあります。

スコットランド最大の都市、グラスゴーから車でA77国道をとおって一時間弱、列車ではニューカッスル行きかAyr方面行きかで到達時間は変わるかと思いますが、40〜60分くらいの所要時間だと思います。

 

 

街は比較的海に近いからかカモメが飛んでいるのもみられるおだやかな印象。スコットランドらしいウイスキー工場があるものの、大きな重工業の産業はないのかもしれません。

 

 

 

中心部ものんびりとしていてせわしい感じがありません。地方都市のハイ・ストリートに必ずあるチェーンのスーパーマーケットも地元資本と思われる一件しかなく、比較的古くからのお店も残っているような印象も受けました。

中心部の通りを一本外れると幅の狭い川が流れていて、おしゃれなカフェや小さいながらも値段が高めのホテルもあるようで、この周辺は日本の観光ができる地方都市のような雰囲気も感じました。

 

彼らのオフィシャル・ホームページによれば、なんと新しいアルバムの制作がミキシング段階まで進んでいるようです。シャビーロード・スタジオではなく、グラスゴーで録音されているらしいのですが、予定どおりアルバムが発表されればライブも含めた活動再開が期待できたいへん楽しみです。

(記事作成 2002年6月)

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